「世界に冠たる日本の新幹線、その成立過程は如何なものであったのか・・・。」これは昔からずっと疑問に思っていたテーマです。
それでこの本に新幹線計画の裏話的なものをを期待したのですが、生憎この本の刊行は1959年。新幹線開業は1964年で、残念ながらそういう話はありませんでした・・・。
書店で手に取った時点でそれは分かっていたのですが、にも拘らず購入して読んだ理由は「自叙伝」だったからです。つまり新幹線計画を遂行させるに至った思想的背景がこの中にきっとあるだろう、と。
ところで、日本の鉄道は、2本のレールの間隔(軌間とかゲージなどと言います)が世界標準よりも狭い。世界標準を「標準軌」、それより狭いものを「狭軌」と言います。先述の通り日本の大部分の鉄道は狭軌ですが、新幹線は標準軌です。日本の新幹線計画には軌間を変える「改軌」の問題が常に付き纏うのですが、その辺の話はいずれ機会があったら・・・ということで。
話を戻します。思想的背景でしたね。
氏は初代鉄道院総裁の後藤新平伯の勧めで鉄道院に入ったのですが、この後藤伯と言うのが改軌を提唱していた人物で、やはりその影響を受けたのが新幹線構想の理由の一つと思われます。これは、他の本でも同じようなことが書いてありましたが、若い時分に受けた思想が後々まで影響したのだろう、ということを新たに感じました。
どんなに良いものでも、慣れないものには手を出し辛い。新幹線は、当時輸送能力の逼迫した東海道本線の増設線として計画されましたが、狭軌増設案を差し置いて標準軌増設案を採用したのは、この辺にも理由があるのでは?と思っています。
そうそう、大陸での生活が長いと言えば、この本のタイトルですね。「有法子(ユーファーズ)」。氏曰く、中国語で「まだ方法がある」「もっと努力しよう」という意味とのこと。70歳を超えても国鉄総裁という激務を努める氏の人物像が伝わってきました。
2011/06/26投稿
2022/03/11更新
2022/03/11更新