やまびこ停車場

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噴火した! 火山の現場で考えたこと 荒牧重雄著

 

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題名 噴火した! 火山の現場で考えたこと
著者 荒牧重雄
発行所 東京大学出版会
発行日 2021年10月15日
ISBN978-4-13-063717-6

 

 以前に読んだ「富士山噴火 その時あなたはどうする?」をきっかけに、にわかに火山噴火に対する興味が起きてしまった。題名にビックリマークが付いているから読みやすいだろうと踏んだら、案の定的中。「東大」から出版されているから難しいのか?と、一抹の不安もあったのだが杞憂だった。


 現役の第一線で活躍している研究者だろうと思ってページをめくったら驚いた。最初の一文が「火山の研究を一生の仕事として、はや六〇余年が経った。」とある。経歴を見ると、何と1930(昭和5)年生まれ、90歳の高齢の方が執筆されたのである。老いてなお意欲的でいらっしゃる姿に感銘を受けた。「感銘」、実は本書の至る所に出てきた言葉でもあり、著者の心情が意外な程に伝わってくる本もである。

 

 悠久の歴史を刻む火山に比べると人の一生など刹那の如くではあるが、人間社会においては火山の生き字引的存在である著者の体験談は実に豊かで面白い。カバー写真は伊豆大島三原山の1986年噴火の姿である。勿論「映え」がするだけのお飾りの写真ではなく、噴火当時は島に乗り込み、陸からも空からも間近で噴火を観察されていたのである。

 

 本書の数あるエピソードの中で突出して興味を持ったのが、この三原山噴火の章である。三原山は著者の所属していた東大が監視していた火山で、主役級の立場でご活躍されていた雰囲気がひしひしと感じられる。また、誰よりも火山に知悉している人物ですら、「恐怖心」と直截に表現されていたのも印象的だった。

 

 1986年噴火の記憶は私も持っている。巨大な溶岩噴泉の映像と全島避難というニュースは強烈なインパクトがあった。島民がペットを置き去りにし、無人の街を犬が徘徊していた映像も忘れられない。


 テレビ越しの映像だけで十分に驚いたものだが、現地に居た著者に言わせると映像は迫力が無くて拍子抜けをしたらしい。逆に言えば、噴火を間近に見れば想像以上の恐怖が我々を襲うだろうとも解釈できる。

 

 本書でも指摘があるのだが、火山の噴火は長時間続く可能性がある。数日、数カ月、数年・・・。江戸時代に起きた富士山の宝永噴火は2週間で収まったというが、次の富士山噴火が同じくらいの期間で終わるとは限らない。降り積もった火山灰が綺麗に片付いた頃にまた噴火、なんてことの繰り返しもあったりして・・・。実際、雲仙普賢岳は6年も続き、私もニュースを見て「まだ噴火してんの?」と呆れたことを思い出した。


 火山が噴火したら長期戦も覚悟しなければならない、というのが本書から得られた教訓である。

 

2022/02/23投稿
2022/03/07更新