やまびこ停車場

ただいま、過去に投稿した記事の一部を非公開にしております。

大月日帰りよくばり旅行-その3

やっと旅行のはじまりです。


往路


午前5時前。外はまだ真っ暗だった。
玄関を出て不意に空を見上げると、月が煌々と輝いていた。
「満月だったのか?・・・」
満月だけでもう、お腹いっぱいの気分。しかしこれから壮大な景色を見に行くのだ!
実に幸先のいいスタート。

車に荷物を詰め込んで、いざ出発!
一ヶ月ぶりの運転。うーん、ちょっとたどたどしかった。
とにかく早く辿り着こう。さっそく高速に乗り一路山梨へ。

首都高とは言え、さすがに朝はすいていた。面白いようにスイスイ走って行く。
そしてひたすら中央道を西へ西へ。東の空はようやく白くなってきたが、月明かりは
未だ光を放っていた。

八王子を過ぎ、相模湖を超え、山梨県に突入。
周りから山が迫って来る。闇夜も随分明るくなってきた。

ふと、右斜め前方を見る。
何と、満月が山の向こうに落ちていく!・・・

「おぉ・・・」

月が、丸い月がまるで夕日の如く山の向こうに落ちて消えていった。
こんな光景は初めてだった。
そして陽が昇る。朝の到来を強く実感した瞬間だった。

6時を過ぎ、西の空もようやく明るくなり、周りの山がほのかに赤く照らされる。
山の色・空の色、刻一刻と変わっていくのが面白い。
「今頃頂上では暁の富士山を満喫しているんだろうなー・・・」
そんなことを感じ、気が少しはやり、そしてひたすら走り続ける。

7時前に大月ICに到着。すぐさま脇道に入って行く。
ここから一気に1500Mの登山口まで駆け上がるのだ。

曲がりくねる林道をぐいぐい登る。どんどん登る。
目的地はまだかまだか。なかなかナビに到着地が現れてこない。
途中、富士山を垣間見る。綺麗な桃色に染まっていた。
立ち止まって眺めたかったが、頂上まで我慢しよう。

向こうに車が止まっているのが見えた。ようやく登山口に着く。
時計を見る。7時10分。慌しく登山モードに切り替えて、
準備体操もそこそこに最初からハイペースで登っていく。

しかし運動不足は祟った。
5分と経たないうちに、息が乱れる。
山の朝はとにかく冷える。頭がとくに冷やされる。うぅ、冷たくてガンガンする・・・。

「はぁー、はぁー、はぁー」
溜めに溜めた体中の老廃物を吐き出すかのような呼吸をしながら登り続ける。
霜柱で凍った登山道は以外に歩きやすい。小股で歩を早めてとにかく前へ前へと進む。
すっかり葉の落ちた木々の間から富士が見える。ほのかに赤く照らされている。

道も半ばを過ぎた頃、上から三脚を担いで何人か下ってきた。
自分と同じで快晴を狙って写真を撮りにきた人たちだろうか。
やっぱり朝に来て正解だったと確信。

体もようやく慣れてきた。息は荒かったがペースは落ちなかった。
上を見上げる。まだ林が続くのか!
一瞬そう思ったが、ん?人がいる。あれは標識か?・・・頂上か!

一気に駆け上り、頂上到着。すぐに後ろを振り返ると、さっきまで
赤みがかっていた山々は、いつの間にか青く青く変わっていた。

雲ひとつない本当に澄んだ空。
幾重もの山の向こうに秀麗な富士の姿。
期待以上の壮大な世界が広がっていたのだった。

登頂の喜びを噛みしめる間もなく、すぐさまカメラを取り出して撮影。
半分焦っていた。考えもせずにとにかく撮りまくっていた。

そして一通り撮り終わったあとに改めて、ようやく壮大な眺望を観覧したのだった。

続く