やまびこ停車場

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不戦海相 米内光政 生出寿著

※今回は画像なし

 

題名 不戦海相 米内光政
著者 生出寿
発行所 徳間書店
発行日 1989年5月31日
ISBN4-19-813966-0

 

 2017年に光人社NF文庫からも発行されたが、私が購入したのは1989年発行のハードカバーのもので、横須賀市内のリサイクルショップにて発見した。

 

 米内光政は旧日本海軍横須賀鎮守府司令長官を務めた経歴があるのだが、所縁の地で日に焼けた状態で二束三文で置いてあったのが何となく不憫に思えてしまい、捨て猫を拾うような気持ちで(というと大袈裟だが)手に入れたのである。

 

 海軍大臣や総理大臣を務めたので、戦前・戦中の歴史において語られることも多い。こういう人物を取り上げるにあたっては、特に誰が書いたか(著者の思想的背景)が重要になる。

 

 著者の生出寿氏は1926年生まれで海軍兵学校第74期、海軍少尉であったという。という事は1945年3月兵学校を卒業して1年も経たずに少尉の任を解かれた(敗戦により軍隊解散)のだろう。1年未満ではあるものの、れっきとした軍人に間違いはないが、本書の発行は著者が63歳のときで、読んだ限りにおいてはやはり戦後以降の影響を受けているように感じられる。所謂「サヨク」とは違うのだが。

 

 本書の著者の主張は明快である。「・・・べきであっただろう」という表現はその典型である。その著者の意見が正しいかを判別するだけの知識を私は持っていないが、少なくとも戦中史を考察する上でのポイントは与えてくれている。

 

 ちなみに、著者の視点では本書で見てほしいところは7点あると明言している。但し、それは「あとがき」の一番最後に書いてあるので注意されたい。「まえがき」は無い。加えて言うと章番号も無いが、章題に相当するものが26あるので、26章構成としよう。米内が登場するのは5章からで、1~4章が長いプロローグという感じである。

 

 ところで米内光政には独自の読書法があるという。曰く「米内さんは、このごろは頭が鈍くなったから本は三度読む。始めは大いそぎで終わりまで読み通し、つぎは少しゆっくり、最後には味わって読む、といっていたことがある」、と。

 

 実は、私は同じ本を二度読みしているのだが、それはこの米内流読書術の影響である。流石に三度読むだけの悠長さは無いので「少しゆっくり」は省いているが、一回目は急ぎ、二回目(最後)は熟読するスタイルは同じである。